英語の苦手意識は年々大きくなる。大学受験でとにかく覚えた単語の山のおかげで、なんとなくの意味はわかるものの、それはなんとなくのまま。友人は大学在学中にドイツ人の恋人を見つけ、とにかく会話したい一心で英語をものにしていた。別の友人は、海外でインターンをして英語を話せるように。つい最近マレーシアかどこかに駐在になったとフェイスブックが教えてくれた。すごいなぁ。
英語は、必要になったらでいいやと思った私にも、ようやく英語を話せるようになりたいと思う機会がやってきた。出版社を始めたのである。名前は『さりげなく』という。英語で、作家の紹介をしたい。出版社の大事にしていることを話したい。そんな気持ちを抱えていたタイミングで、共通の友人が営む喫茶で出会ったのが英語教室の先生、カノさんだった。私の名前はかのこというので偶然にも、同じ名前。厳密にいうと、子以外一緒。ちょっと、ルンとした。カノさんの英語教室は、私が調べた数々のオンライン英会話の授業とは少し異なる。テーマは、哲学や情緒。言葉にならない気持ちや想いを扱ったりする。出版社『さりげなく』の扱うテーマが「AとBのあいだにある無数のもの」「わかりにくい本をつくる」だったので、これはぴったりかもと思い、参加させてもらうことになった。授業はオンラインで行う。
私がその日参加した授業のテーマは、ペアで受け答えするうちに、「相手のことを好きになる36の質問」という心理学の実験を取り入れたもの。初対面のクラスメートが3人、先生が2人。みんなのことを好きになれるか。というドキドキと、英語を話せるかのドキドキで手汗がひっきりなしにでていた。結論からいうと、授業はとっても楽しく、今回のテーマにずっぷりはまり、クラスメートのことをもっと知りたいと思うようになっていた。
特に面白いなと思った質問は2つ。
What do you value most in a friendship? 友達になるときに一番大切なのは?
What role does love and affection play in your life? 愛や愛情ってどんな意味がある?
というものだった。日常会話では簡単にはでてこない質問。英語を話す前に、うーんうーんと考えていた。英語にするのが難しいのはもちろんだけど、自分の意見を言葉にするのも結構難しい。いつもなんとなく考えていたことを、きちんと言語化する。
友達になるときに一番大切なのは?
What do you value most in a friendship?
– The most important thing about friendship is what the other person thinks about life, education, money, food, and how to raise children.
– The most important thing about friendship is eating together and liking the same food. In my case, I love to eat fish. I can’t eat fast food because I get a stomachache, so eating good food together is important.
– The most important thing in a friendship is feeling empathy for one another. For example, I feel empathy for K already because she said she doesn’t like fast food.
私は、「一緒にご飯を食べること、同じご飯を食べること」と答えた。人間だけが、親子以外に食べ物を分け与えるというのを、本で読んだのもあって。遥か昔、人類信頼関係を築くためには、他の仲間が獲ってきたものを食べるという行為が極めて重要だったという(諸説あるかな)
コロナウィルスで、どうしてもご飯を友人や仲間たちと食べることは減ってしまったけども、あの時間は私にとって大事な時間だったなぁと思い出しながら話をした。
愛や愛情ってどんな意味がある?
What role does love and affection play in your life?
In your life, how do you experience love (feeling) and affection (actions of someone: hugging, giving compliments, making jokes)
– When his daughter made some mistakes, he told her his thoughts and then he forgave her.
– Love is important for me. I have accepted a lot of love from my parents, therefore I can give love to my children. I often say “I love you” to my children.
– I feel the same as Yoko. I don’t have any children, but I can give love to my parents, my friends, my partner and everyone. I show affection by always saying thank you. I also tell everyone when I’m feeling happy or sad.
この質問には、「私には子どもはいないけど、両親に、友人に、パートナーに、みんなに愛をもらっている。だから私はいつもありがとうと言う。嬉しい気持ちも悲しい気持ちも、全部伝えるようにしている」と答えた。日本語にすると、ちょっと恥ずかしい気持ちにもなるけれど。愛とは、大事な気持ちを伝えて、相手の気持ちを受けとめることかと思った。自分の言ったことを反芻して、飲み込んだ。これからも、大事にしたいことだなぁと思う。
初めての英語教室は、英語を学ぶことはもちろんだけど、自分が想っていることを丁寧に言語化する時間だった。日本語で簡単に伝えられない分、自分が考えていることはどういうことか、話しながら、気づくところもたくさんあった。言いたいことを言えてないような、もどかしさはずっと感じていたものの、日本語だって同じである。全てが言葉になっているような気持ちは傲慢だ。考えていること、気づいたこと、胸にあることの一部を丁寧に掬うように言葉を発しているのだ。『全部が言葉になっていないからといって、ないことにはならない』これは私の大事な本の一節で、そんなことを思い返し、感じた英語教室でした。
出版社『さりげなく』 わかめかのこ
京都で仲間たちと小さな出版社をしています。
出版社の名前は『さりげなく』と言います。6月生まれの双子座。
作り手の意図を超えて、読まれ、感じられる『本』という媒体を
大変気に入っています。https://www.sarigenaku.net/