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霜月
 
6月ごろから魚に関する絵本の編集を担当させてもらっていて、自然を「守る」、「考えよう」という言葉に敏感に反応するようになっていた。守りたいという気持ちは、自然をがばっと包み込んでしまっている力強い包容というか傲慢さ、みたいなものを感じていて。もちろん、守るも悪くないんですよ。そりゃ。守りたいっていう気持ちは必要だと思う。でもなんだか私は腑に落ちず。自然を守るのは人間ではなく、自然と人間と生き物の目線は同じわけで。どちらが上とか下とか、そういうことではないはず。この距離感をもっとうまくこの気持ちを表せる言葉はないかなぁ。と英語レッスンで尋ねる。
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最近よく聞く英語のdistance は距離。空間的な隔たりはgap。境界線boundaryもちょっと似ているね。線を引いて、分ける感じ。日本語の「距」は辞書で引いたら「隔てる、ふせぐ、拒む」の意味ですって。そこに離れるがついて、“距離”という言葉は隔たりそのものですね。今、気になるのはdistanceよりも、その間にあるspace (空間、合間、宇宙 )やroom (余地、余裕)などの「空間」です。
 
Breathing space 一息つける時間、ちょっと考える期間
Look into space 宙を見詰める
Space out ぼんやりする
Make room場所を作る、席を譲る、道をあける
面白い表現で、
There’s an elephant in the room. (明らかに問題があるのに) その場で触れてはいけない話題
 
などもあります。
自然との距離も人との距離も、はっきり分けるのでなく、互いの大切な「間」だと思って感覚をとぎすますと、背伸びせずにやるべきことが見えてくるんじゃないかしら。
ときどきspace outしつつ、すでにみんな宇宙にいるなあ、などと考えながら。
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茅葺き屋根職人の相良さんの言葉を思い出す。
昔、山と里の間には草むらがあった。人は、山にいきなりはいるのではなく、草むらで自然と付き合う。植物の名前を覚え、技を学んでいく。生き物は、草むらにいる生き物を食べ、山に戻る。ぶつからないように、お互いの様子を伺い、気配を感じ合う空間。そのあと、スナックのママであるれみさんの言葉を思い出す。汀(みぎわ)という空間。草むらが山と里の間であるなら、海と陸の間は汀である。
 
距離感ではなく、そうか、間か。Spaceか。空間と宇宙が同じ単語であることの奥ゆかしさに笑ってしまいそうになった。自然との距離を縮めるのが重要ではなく、互いのspaceを感じ取りあう間。気配を感じる間。であれば、やっぱり自然に対する言葉は、守るではないような気がする。自然や生き物との間合いを感じること、間合いという存在に気がつくこと。おお、頭を使った。一旦ここで終了。I’m spaced out. Bye!
 

汀に立つと、私も海の生き物だったんだ、ここから生まれたんだね、というきもちになった。

 

出版社『さりげなく』 わかめかのこ 
京都で仲間たちと小さな出版社をしています。

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第一弾は、モノ・ホーミーさんの「するべきことは何ひとつ」です。